**この記事は、日西商業会議所発行の季刊誌「
スペイン広報74号 2007年冬季号」に掲載されたものです**
このコラム、タイトルが「スペインの中の日本」だからして、これまでスペインにやって来た、または住んでいる人々を取り上げてきたが、今回は「番外編」的に日本在住のスペイン人女性、ペピ・バルデラマさんを紹介したい。
番組を聴いてくれている方にはお馴染みだと思うが、そう、彼女は「ソナ・ハポン」の今シーズンのコラボレーターの1人。東京から毎月1回「日本とスペインの文化比較」という切り口で、あれこれとレポートしてくれている。
去年10月からインタビューものの
ポッドキャストを始めたことで、オンエアを聞き逃がした人や、日本で聴いてくれているリスナーからダイレクトな反応メールが届くようになった。アリガトウゴザイマス。
「ペピちゃんの視点は新鮮」「最近日本に旅行するスペイン人が増えて、彼らが受けた印象をよく耳にするけど、長年住んでる人のカルチャーショック話はまた違ったおもしろさがある」「愉快なトーク」などなど、良好なリアクションが多く私も嬉しいかぎりだ。
文部科学省の奨学生として東京で生活し約4年になるペピさん、東京大学法学部で最初の2年を研究生として過ごし、ここ2年で修士課程に挑戦している。つい数日前、最後の正念場「卒論」のプレゼンを全力投球で終えたばかり。テーマは「日本国憲法とスペイン国憲法との比較‐天皇制と君主制に即して‐」。
日本人の東大院生と一緒に、日本語で、しかも法律の勉強をするなんて…そりゃもう大変なことに違いないと想像するが、生まれつきアクティブな彼女は学業外でもフットワーク軽~くそのタレントを開花させているスーパー・ウーマン。
まず文筆業。アメリカの出版社「ルル」からこれまで4冊の本を出版。最新刊は昨夏リリースされた詩集「スパイラル」。さらにバルセロナ自治大学時代(法学部と国際教養学部・日本文化学科を卒業)にバックパックを背負って旅した国々(フランス・オーストラリア・ニュージーランド・香港)と日本の事情を 「Portal de viajes.com」という 旅行ポータルサイトに執筆している。個人のブログも2つ運営している他、イタリアのバンドの作詞家として、また「モンキー・ビジネス」というアーティストグループのメンバーとして活動中と、まあとにかく、じっとしていることができない「書くこと大好き!人間」なのである。
その上「奨学金だけじゃ生活は無理」と、複数の語学アカデミーでスペイン語・カタルーニャ語の講師もしているという。「一体いつ寝てんのっ?!」と思わずツッコミを入れたら、「実は…秋から卒論が猛烈に忙しくなったから、他のことは中断してソナ・ハポンだけに絞っている」と涙がチョチョ切れるセリフが返ってきた。
「そ、そりゃ悪いね。忙殺されてるところ、ボランティア・リポートなんぞお願いして…」。お礼にクリスマス・プレゼントを熟考し「イタリア製の珍しい香水なんてどう?」と持ちかけると、「香水は着けないから…うーん…チョリソがいい。ずいぶんご無沙汰してるチョリソが食べたい!」とおっしゃる。花より団子ね。好きよ、そういう人。ええ、ええ、スペインNo.1のチョリソを贈りましょうとも。
ここに拝借した写真からも見て取れるように、彼女はシンプルで明朗活発、アバンギャルドで個性的、好奇心が強く行動的、ひょうきんだけどまじめ、そして柔軟かつ真っ直ぐに生きる28歳の女性だ。
言うまでもなく頭の回転がとても速く、フリートークの妙も得ている。ソナ・ハポンのリポートはぶっつけ本番のほぼ1人喋りだが、無駄がなくポイントを押さえた内容を独特の語り口で聞かせてくれて、回を重ねるごとに私の感心&満足は大きくなっていく。「将来は弁護士よりジャーナリストの方が向いてるんじゃなかろうか?」と思ったりするが、本人は「筆で身を立てるつもりはない。でも仕事の合間に書くことは続けていくわ。ライフワークとしてね」とツレナイ。
7月にいよいよバルセロナに帰り就職活動を始めるそうだが、どういう方向に進んだとしても有望なニューカマーとなるに違いない。
「スペイン広報」の編集者からも大ウケだった2枚の写真の提供:Pepi Valderrama